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<毎日小学生新聞賞> 受賞

「Duffy(ダフィー)とその家族」

松田 哲典

松田 哲典さん コメント

「この度は、記念すべき第1回日本写真絵本大賞において、栄えある毎日小学生新聞賞を頂戴し、誠にありがとうございます。選考していただいた審査員の皆様に心より感謝申し上げます。今回応募させていただいた『Duffyとその家族』は、日高山脈の小さな湖の湖畔で暮らすナキウサギの物語です。2013年の春から林道が雪に閉ざされるまでのひとシーズンを通して、ナキウサギたちの日常を写真に記録しました。彼らが豊かな自然の中でたくましく育ち、厳しい冬を前に生きる術を身につけていく様をありのままに伝えたいと思い、あえて余計な脚色は加えませんでした。この湖の周辺にはナキウサギのほかにも、ヒグマやエゾシカ、リスやキツネなど、多くの動物たちが暮らしています。Duffyや紋次郎はもういませんが、彼らの子どもたちに今回の受賞を報告するとともに、これからも生き生きとした動物たちの姿を写真で紹介して参りたいと思います。この度は本当にありがとうございました」

審査員 講評

太田 阿利佐 さん

毎日小学生新聞編集長
学生新聞部長

毎日小学生新聞賞を受賞されました北海道の松田哲典さんに、先日電話でお話をうかがいました。もちろん初めてお話させていただいたのですが、とても魅力的な方で、すいぶんと話し込んでしまいました。

受賞作の「Duffy(ダフィー)とその家族」を撮影されたのは、自宅から車で40分ほどの湖のほとり。この湖の周りには、ナキウサギだけでなく、ヒグマやエゾジカなどさまざまな生き物がいて、退職された今は毎日のように撮影に行っているそうです。

松田さんが、ナキウサギのダフィーと出会ったのは2013年、この湖でナキウサギの撮影を始めて2年目だったとか。当時はいつ、どこにナキウサギが出てくるかまだよく分からなくて、丸一日湖畔にいて、一回も会えない時もありました。

その中で、ダフィーはフレンドリーで、松田さんと相性がよく、よく出てきてくれたそうです。名前は、ディズニーのキャラクターのくまに顔が似ていることから、松田さんがつけました。なわばりも広くて、活発で、子どもが3匹いて、長男がもんた、次男が紋次郎……と名付け、紋次郎だけがずっとダフィーのそばにいたので、撮り続けたそうです。

電話ごしにナキウサギの声も聞かせてもらいました。チッチッチッと鳥のような、大きな鳴き声でした。

私が驚いたのは、松田さんの写真のすばらしさもありますが、添えてある文章が簡潔で味わい深く、全く無駄がないことです。俳句でもやっていらしたんですか、と聞くと、そうではない、絵本のような物語を書いたのは初めてです、と言います。「初めてでこんなすばらしい文章が書けるはずはない」とさらに追及(!)しますと、「役場の総務担当で、さまざまな原稿はよく書いていました」ということでした。

言葉が多すぎない。すると写真が、自然と何かを語り始めます。写真と言葉がうまくかみ合ったとき、作品がいきいきと動き出す。私はこの作品はダフィーと松田さんの合作ではないかなと思っています。